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【徹底比較】ダクト工事の基本|亜鉛鉄板とグラスウールの違いと選び方

 

【プロが徹底比較】ダクト工事の基本|亜鉛鉄板とグラスウールの違いと選び方

この記事のポイント

空調の品質を左右するダクト工事。主流の「亜鉛鉄板」と「グラスウール」には明確な違いがあります。亜鉛鉄板は強度と汎用性に優れ、グラスウールは断熱・吸音性が強みです。この記事では、20年の経験を持つ専門家が、両者の特徴からコスト、施工の注意点まで、現場で本当に役立つ知識を分かりやすく解説します。


「空調が効かない」「運転音がうるさい」といった建物の悩みは、実は「ダクト」に原因があるかもしれません。ダクトは、快適な空気を運ぶための重要な「空気の道」。この道の材質選びと施工品質が、空調システムの性能を最大限に引き出せるかどうかを決定づけるのです。

私がこれまで数多くの現場を見てきた中で、特に多く使われているのが「亜鉛鉄板ダクト」と「グラスウールダクト」です。どちらも優れた材料ですが、特性は全く異なります。本記事では、この2つのダクトの違いを徹底的に比較し、どのような現場にどちらが適しているのか、プロの視点から選び方のポイントを解説していきます。

【結論から】亜鉛鉄板 vs グラスウール 性能比較の早見表

まずは、両者の違いが一目でわかるように比較表にまとめました。どちらを選ぶべきか考える際の参考にしてください。

項目 亜鉛鉄板ダクト グラスウールダクト
主な用途 還気・排気、厨房排気、高速ダクトなどオールマイティ 一般空調の低速な給気・還気ダクト
強度 (物理的衝撃) ◎ 非常に高い △ 弱い(へこみやすい)
断熱・保温性 × そのままでは無し(別途、保温工事が必須 ◎ ダクト自体が断熱材
吸音・消音性 △ 音が反響しやすい ◎ 音を吸収しやすい
コスト感 材料は安価だが、保温工事費が別途発生 保温工事が不要なため、トータルでは経済的な場合が多い
施工性 重量があるが、現場での加工はしやすい 軽量で搬入しやすいが、破損しないよう丁寧な扱いが必要
清掃性 ◎ 内部清掃が可能 × 内部清掃は困難

このように、単純にどちらが優れているというわけではなく、「適材適所」で使い分けることが最も重要です。


定番で高耐久「亜鉛鉄板ダクト」を深掘り

亜鉛めっきを施した鋼板(亜鉛鉄板)で作られる、最もスタンダードなダクトです。その歴史は古く、多くの建物で採用されてきた信頼性の高い材料と言えます。

スパイラルダクトと角ダクトの違い

亜鉛鉄板ダクトには、形状によって大きく2種類あります。

  • スパイラルダクト: 亜鉛鉄板の帯を螺旋状に巻いて作られる円形のダクトです。強度が高く、工場生産のため品質が安定しているのが特徴です。見た目もスッキリしているため、店舗などで露出配管として見せるデザインにも採用されます。
  • 角ダクト(レクタンギュラーダクト): 亜鉛鉄板を折り曲げて四角形に加工したダクトです。天井裏の梁や配管が入り組んだ、限られたスペースで空気の通り道を最大限確保したい場合に非常に有効です。

メリット:なぜ今も選ばれ続けるのか?

亜鉛鉄板ダクトの最大の強みは、その物理的な強度と耐久性です。多少の衝撃では破損せず、長期間にわたって安定した性能を維持します。また、金属製であるため不燃材料として扱われ、火災時の安全性が高い点も大きなメリットです。厨房の排気ダクトのように、高い耐火性や清掃性が求められる場所では、亜鉛鉄板ダクトが第一の選択肢となります。

デメリットと対策:保温と防音の必要性

一方で、弱点も明確です。「保温工事って、そんなに大事?」と思うかもしれませんが、これは非常に重要です。金属製のダクトは外気の影響を受けやすく、何もしなければ夏場は冷たい空気を通す際に表面が結露し、水滴が天井のシミの原因になります。冬場はせっかく温めた空気が冷めてしまい、空調効率が著しく低下します。

そのため、亜鉛鉄板ダクトを使用する際は、グラスウールなどの保温材を別途巻き付ける「保温工事」がセットで必須となります。また、ファンの運転音や風切り音が内部で反響しやすいため、寝室や会議室など静けさが求められる場所へ繋がる系統では、途中に消音器(サイレンサー)を設置するなどの対策も必要です。

省エネ・静音の雄「グラスウールダクト」を深掘り

高密度のガラス繊維(グラスウール)をボード状に固め、その表面をアルミ箔で覆って作られたダクトです。断熱材とダクトが一体化している、いわば「一石二鳥」の材料です。

メリット:なぜ注目されているのか?

グラスウールダクトの最大のメリットは、優れた断熱性と吸音性です。ダクト自体が断熱材でできているため、亜鉛鉄板ダクトのように後から保温材を巻く必要がありません。これにより、工期の短縮とトータルコストの削減に大きく貢献します。さらに、材料自体が音を吸収する性質を持つため、ファンの運転音や空気の流れる音が伝わりにくく、静かな室内環境を実現しやすいのが特徴です。

また、亜鉛鉄板に比べて非常に軽いため、搬入や吊り込み作業が容易で、施工者の負担を軽減できる点も見逃せません。

デメリットと注意点:強度と清掃性

魅力的なグラスウールダクトですが、万能ではありません。最大の弱点は物理的な強度です。表面はアルミ箔のため、工具をぶつけたりすると簡単にへこみや破れが生じます。施工中は特に丁寧な取り扱いが求められます。

もう一つの重要な注意点は、内部の清掃が困難であることです。内部がガラス繊維のため、ブラシなどで強くこすることができません。そのため、油分や塵埃を多く含む厨房排気や、病院の手術室、工場のクリーンルームといった高い清浄度が求められる場所には使用できない、という明確な制約があります。

プロはこう選ぶ!用途別の最適なダクトの選び方

それぞれの特性を理解した上で、現場の状況に応じて最適なダクトを選定することが、プロの腕の見せ所です。

こんな現場は「亜鉛鉄板ダクト」がおすすめ

  • 厨房排気や工場排気: 油煙や粉塵を含み、定期的な内部清掃が必要な場所。
  • 露出配管で意匠性を重視する店舗: 塗装仕上げなどでデザインの一部とする場合。
  • 高速で大量の空気を送る幹線ダクト: 高い風速と圧力に耐える強度が必要な場所。
  • 頻繁に人が出入りする天井裏など: メンテナンス時に誤って物をぶつける可能性がある場所。

こんな現場は「グラスウールダクト」がおすすめ

  • 静粛性が求められるホテルの客室や住宅の寝室: 吸音性を活かして快適な環境を作りたい場所。
  • 工期やコストを重視するオフィスビルや商業施設: 保温工事を省略して全体の効率を上げたい場合。
  • 結露対策を特に重視したい humid な地域の建物: 高い断熱性で結露リスクを根本から低減したい場所。

見逃し厳禁!品質を左右する施工管理の急所

どんなに良い材料を選んでも、施工がずさんでは意味がありません。特にダクトは接続部から空気が漏れる「漏気」が最大の問題となります。ここでは、私が現場で若手に必ずチェックさせているポイントをお伝えします。

亜鉛鉄板ダクトのチェックポイント

最重要ポイント:フランジ(接続部)の密着性

  1. ガスケットの挟み込み: フランジとフランジの間に、シール材であるガスケットがズレなく均一に挟まっているか。
  2. ボルトの均等な締め付け: ボルトが対角線上に、均等な力で締め付けられているか。一箇所だけ強く締めると隙間ができます。
  3. シーリング処理: 四隅や接合部に、コーキング材が隙間なく充填されているか。
  4. 支持間隔: 仕様書通りの間隔で振れ止めや支持金具が設置され、ダクトがしっかりと固定されているか。

グラスウールダクトのチェックポイント

最重要ポイント:アルミテープの完全密着

  1. テープのシワ・浮き: 接続部に貼られた専用のアルミテープに、シワや浮きがないか。指でなぞって確認します。わずかなシワが数年後の漏気の原因になります。
  2. 本体の破損・へこみ: 搬入時や施工中に角が潰れたり、表面が破れたりしていないか。特に角の部分は漏気が発生しやすいポイントです。
  3. 適切な補強: ダクトの幅が広い場合、内部にステーなどの補強が仕様書通りに行われているか。補強がないと、圧力でダクトが膨らんだり変形したりする恐れがあります。

まとめ:最適な「空気の道」を作るために

この記事では、ダクト工事の代表的な材料である「亜鉛鉄板ダクト」と「グラスウールダクト」について、その特徴から施工管理のポイントまで解説しました。

亜鉛鉄板ダクトは「堅牢・確実」グラスウールダクトは「効率・快適」と、それぞれに明確な強みがあります。設計者は建物の用途やコスト、求められる性能を総合的に判断し、施工者はその材料特性を深く理解して、特に「接続部」の品質管理を徹底することが重要です。

空調システムの性能は、目に見えないダクト工事の品質に支えられています。この記事が、より良い建物を造るための一助となれば幸いです。