koko325の建設通信

建設業界を広めたい

【現場のプロが教える】配管・ダクトの品質は「支持・固定」で決まる!7つのチェックリスト

 

若手施工管理者必見! 配管・ダクトの支持・振れ止めは、設備の寿命と建物の安全を支える心臓部です。この記事では、20年の設備工事経験から得た「手戻りを防ぎ、品質を確保する」ための7つの実践的チェックリストを、現場の勘所を交えて徹底解説します。

天井裏に隠れてしまう配管やダクト。しかし、その施工品質は、数年後、数十年後の建物の安全性や快適性に直接影響します。特に、見えなくなる部分の支持・固定は、一度施工不良が起きると修正が非常に困難です。

「図面通りにやっているはずなのに、なぜか後で問題になる…」
「チェックすべきポイントが多すぎて、何が一番重要かわからない…」

これは、多くの若手技術者が抱える悩みではないでしょうか。この記事では、そのような悩みを解決し、明日からの現場管理に自信が持てるようになるための「勘所」をお伝えします。

そもそも、なぜ配管・ダクトの「支持・固定」はこれほど重要なのか?

支持・固定の役割は、単に配管やダクトを「吊っておく」だけではありません。以下の4つの重要な役割を担っています。

  • 自重の支持: 配管・ダクト本体と、その中を流れる水や空気の重量を、24時間365日支え続けます。これは最も基本的な役割です。
  • 振動の抑制: ポンプやファンの運転時に発生する振動が建物全体に伝わるのを防ぎます。これが不十分だと、騒音や、最悪の場合は配管の破損に繋がります。
  • 熱伸縮への対応: 温水や冷水が流れる配管は、温度変化で伸び縮みします。この動きを適切に逃がしたり、拘束したりするのが支持金物の重要な役割です。
  • 耐震性の確保: 地震大国である日本では、これが最も重要と言っても過言ではありません。地震の揺れで配管やダクトが落下・破損すれば、漏水やガス漏れといった深刻な二次災害を引き起こします。

品質管理の心臓部!現場で使える7つのチェックリスト

それでは、具体的に現場で何を、どのようにチェックすれば良いのでしょうか。私が特に重要だと考えている7つの項目をリストアップしました。これらを一つずつ確認することで、品質は飛躍的に向上します。

□1. 支持間隔は仕様書通りか?(基本中の基本)

まずは基本ですが、最も見落としが多いポイントです。配管の種類や口径、ダクトのサイズによって、仕様書で定められた最大支持間隔は異なります。

  • 確認方法: メジャーを使い、実際に支持点間の距離を測定します。特に長い直管部分だけでなく、曲がり部分や分岐部分の前後も忘れずに確認しましょう。
  • 現場の勘所: 塩ビ管などのプラスチック系配管は、鋼管に比べて熱による伸縮が大きく、温度でたわみやすいため、支持間隔がよりシビアになります。夏場と冬場で見え方が違うこともあるので、仕様書の遵守が特に重要です。

□2. 吊り金物の材質・サイズは適切か?(コストと安全の分岐点)

支持金物は、大きければ良いというものではありません。過剰なスペックはコスト増に直結しますし、逆にスペック不足は安全性を損ないます。

  • 確認方法: 施工図や仕様書と、実際に使われている全ねじボルトの径、支持鋼材(アングル、チャンネルなど)のサイズや厚みが一致しているか照合します。
  • 現場の勘所: コスト削減のプレッシャーから、指定よりワンサイズ下の材料を使いたくなる場面があるかもしれません。しかし、それは長期的な安全性を犠牲にする行為です。必ず図面通りの材料を使用しているか、厳しくチェックしてください。

□3. 【最重要】振れ止めは正しく機能するか?(地震対策の要)

地震時に配管やダクトの「暴れ」を防ぐ振れ止めは、まさに命綱です。設置されているかだけでなく、正しく機能するかも確認が必要です。

  • 確認方法:
    1. 設置間隔: 水平主配管などで、仕様書通りの間隔(例: 12mごと)で設置されているか。
    2. 設置方向: 地震の水平な揺れに対し、配管の軸方向と直角方向の両方に抵抗できるよう、斜めに設置されているか。一般的には頂部から45度以内の角度が推奨されます。
    3. 固定部の強度: コンクリート躯体に打設されたアンカーが、十分な強度を持つものか(あと施工アンカーの種類や施工方法も含む)確認します。
  • 現場の勘所: 振れ止めは、天井のボードを張ってしまうと完全に隠蔽されてしまいます。後からでは絶対に確認できません。必ず天井を張る前に、あらゆる角度から写真を撮影し、記録を残してください。

□4. 防振対策は万全か?(騒音・振動トラブルを防ぐ)

ポンプ室や空調機械室の周辺では、振動対策が不可欠です。竣工後に「どこからか音がする」というクレームの多くは、この対策不足が原因です。

  • 確認方法: 機器の周辺の配管・ダクトに、防振ゴムやスプリング付きの吊り金物が仕様書通りに使われているか確認します。
  • 現場の勘所: 防振材が機能するためには、「縁切り」が重要です。防振材を挟んでいても、ボルトを締めすぎていたり、金物が壁や他の構造物に接触していたりすると、そこから振動が伝わってしまいます。周辺とのクリアランスが確保されているか、指差し確認しましょう。

□5. 異種金属との接触はないか?(見えない腐食を防ぐ)

これは、ベテランでもうっかり見逃すことがあるポイントです。例えば、銅管を鋼製の吊りバンドで直接支持すると、水分を介して微弱な電流が流れ、鋼よりイオン化傾向の大きい銅が腐食する「電食(異種金属接触腐食)」が発生します。

  • 確認方法: 銅管と支持金物の間に、絶縁材(ゴムシートや専用の絶縁支持材)が正しく挿入されているか、一つひとつ目で見て確認します。
  • 現場の勘所: 特に給湯配管など、結露しやすい箇所は要注意です。小さな腐食が、数年後には大規模な漏水事故に繋がる可能性があります。

□6. 配管の伸縮を考慮した「固定」と「拘束」になっているか?

熱伸縮する配管の支持は、ただ固定すれば良いわけではありません。「固定点(アンカー)」と「振れ止め(レストレイント)」、「支持(サポート)」の役割を理解することが重要です。

  • 確認方法: 長い配管ラインにおいて、伸縮を吸収する起点となる「固定点」がどこか、そして伸縮を許容しつつ振れだけを抑える「ガイド」が適切に配置されているか、設計図と照らし合わせて確認します。
  • 現場の勘所: 全ての支持点をガチガチに固定してしまうと、配管が伸びた時に逃げ場がなくなり、座屈や破損の原因になります。「力を受け止める場所」「動きを許容する場所」のメリハリが、設計通りに施工されているかを確認してください。

□7. 施工記録写真は撮ったか?(未来の自分を助ける一手)

最後に、最も重要な習慣です。全てのチェック項目は、必ず写真で記録を残してください。これは、発注者への報告のためだけでなく、将来のメンテナンスや万が一のトラブルの際に、自分自身を助けるための重要な証拠となります。

写真撮影のコツ
・チェック項目がわかるように、黒板(チョークボード)に工事名、日付、場所、確認内容を書いて一緒に写す。
・メジャーを当てた状態で撮影し、寸法がわかるようにする。
・少し引いた全景写真と、確認したい箇所のアップ写真をセットで撮影する。

まとめ:見えない場所へのこだわりが、プロの仕事を作る

配管・ダクトの支持・固定は、一見地味な作業に見えるかもしれません。しかし、今回ご紹介した7つのチェックリストを実践することで、施工品質は格段に向上し、手戻りや将来のトラブルを未然に防ぐことができます。

天井裏に隠れてしまう部分だからこそ、一切の妥協は許されません。今日のあなたの丁寧なチェックが、10年後、20年後の建物の安全と快適を支えています。自信を持って、日々の品質管理に取り組んでいきましょう。