設備工事の品質と安全は、墨出し、支持・固定、スリーブ・インサートといった共通ルールが基盤。正確な施工管理が、後工程への影響を抑え、コスト削減に繋がります。
設備工事の品質と安全は、全ての工事に共通する基本的なルールの上に成り立っています。特に、建物の躯体に関わる「墨出し」「支持・固定」「スリーブ・インサート」は、後工程や建物のライフサイクル全体に影響を与える重要な項目です。
この記事では、これら共通工事の基本と、現場で役立つ管理手法、そしてコスト意識について解説します。
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1. 精度はここから:墨出し・遣方・基準墨
全ての工事は、正確な位置出しから始まります。ここで数ミリの誤差が、後の機器設置や配管ルートに大きな影響を与えます。
- 内容解説:
- 墨出し: 設計図上の線や位置を、実際の床や壁などに書き出す作業です。
- 親墨・子墨・孫墨: 建物の基準となる線(親墨)から、各フロア、各部屋へと正確に位置を展開していきます。
- 管理手法:
- 基準墨の保護: 親墨は工事完了まで消えないように、ビニールテープで保護(養生)するなどの対策が必須です。
- トランシット・レベルの精度確認: 使用する測量機器が正しく校正されているか、使用前に必ず確認します。
- 施工図との整合性確認: 墨出しを行う前に、施工図が最新版であること、建築図や構造図と整合性が取れていることを必ず確認します。
- コスト削減への貢献:
- 正確な墨出しは、やり直し(手戻り)を防ぐ最も効果的な手段です。壁の開口やスリーブの位置がずれると、修正には多大なコストと時間がかかります。初期段階での精度確保が、最大のコスト削減に繋がります。
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2. 揺れと重さに耐える:配管・ダクトの支持・固定
配管やダクトは、それ自体の重さ、内部の流体、そして地震などの外部からの力に耐えられるよう、堅固に支持・固定する必要があります。
- 内容解説:
- 吊り金物・支持金物: 全ねじボルト、インサート、山形鋼(アングル)などを組み合わせて支持材を製作します。
- 振れ止め: 地震時の水平方向の揺れに対して、配管やダクトが大きく振れないように固定する重要な部材です。
- 管理手法:
- 支持間隔の遵守: 標準仕様書やメーカーの基準で定められた支持間隔が守られているか、施工図と現場を照合します。
- 防振材の設置確認: ポンプや送風機の周辺など、振動が伝わりやすい箇所には、防振ゴムやスプリング付きの支持金物が正しく使われているか確認します。
- 耐震支持のチェック: 特に重要な配管や、避難経路上の設備については、耐震計算に基づいた強度の高い支持がされているかを入念に確認します。
- コスト削減への貢献:
- 過剰な支持は材料費と人件費の無駄になります。一方で、支持不足は破損事故や、それに伴う漏水・運転停止などの甚大な被害(=コスト増)に繋がります。仕様書通りの適切な支持を行うことが、長期的な視点でのコスト最適化となります。
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3. 先行か、後追いか:先行スリーブとあと施工アンカー
コンクリートの壁や床に配管やダクトを通すための「穴」をどう確保するかは、コストと工程を左右する重要な選択です。
- 内容解説:
- 管理手法:
- スリーブ位置の最終確認: コンクリート打設直前に、スリーブの位置・サイズ・高さが施工図通りか最終確認します。打設後の修正はほぼ不可能です。
- あと施工アンカーの強度管理: アンカーの種類に応じた適切な穿孔径・穿孔長が確保されているか、孔内の清掃が十分かを確認します。引張試験による強度確認も重要です。
- コスト削減への貢献:
- 先行スリーブの徹底: 計画段階で配管ルートが確定している場合、先行スリーブが最もコストが安く、躯体へのダメージもありません。建築・構造担当者との密な連携がコスト削減の鍵です。
- 適切なアンカー選定: 必要強度に応じて、最もコストパフォーマンスの良いあと施工アンカーを選定します。過剰なスペックのアンカーはコスト増に繋がります。
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まとめ
共通工事は、一見地味ですが、全ての設備工事の土台となる重要な工程です。ここでの品質管理と正確な施工が、後の工程をスムーズに進め、建物全体の安全性と耐久性を保証し、結果的に無駄なコストを削減することに直結します。基本に忠実な管理を徹底しましょう。