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【管理ポイントシリーズ08】新築建築における入退室セキュリティシステム:設計から施工、運用管理まで

新築建築において、セキュリティ対策は建物とそこに暮らす人々の安全と資産保護に不可欠です。本記事では、建築主のニーズを的確に把握し、電気錠、マグネットセンサ、自動扉、タイムスケジュール機能、人感センサなどの主要機器を含めた入退室セキュリティシステムの設計、施工、試験調整、運用管理、そしてトラブルシューティングに至るまでを網羅的に解説します。

1. 建築主のニーズの明確化:綿密なヒアリングと情報収集

効果的なセキュリティシステム導入には、建築主のニーズを正確に把握することが第一歩です。 単なる機能の提供ではなく、建築主の具体的な要望や懸念事項を丁寧に聞き出す必要があります。 そのためには、以下の点を踏まえた綿密なヒアリングと情報収集が不可欠です。

  • 建物の用途と規模: 住宅、オフィスビル、商業施設、倉庫など、建物の用途によって必要なセキュリティレベルは大きく異なります。 規模もセキュリティシステム設計に大きな影響を与えます。大規模な建物では、より複雑で高度なシステムが必要になるでしょう。
  • セキュリティレベルと予算: 建築主が求めるセキュリティレベル(高・中・低)を明確に確認します。 同時に、セキュリティシステム導入に充てられる予算も重要な要素です。 予算によって実現できるシステムの規模や機能が大きく変わるため、初期段階での明確化が重要です。
  • 利用者の属性と行動パターン: 高齢者、障害者、従業員、来客など、利用者の属性はセキュリティシステムの設計に影響を与えます。 例えば、高齢者が多い場合は、操作性の高いシステムが求められます。 また、従業員の入退勤時間や来客の頻度なども考慮する必要があります。
  • 既存設備との連携: 既に設置されている防犯カメラ、警備システム、インターホンシステムなどとの連携可能性を検討します。 既存システムとのシームレスな連携により、より高度で統合的なセキュリティシステムを構築できます。
  • デザインと外観: セキュリティ機器は、建物のデザインや外観と調和する必要があります。 目立たないデザインの機器を選択したり、建物の雰囲気に合ったデザインを選定したりすることで、建物の美観を損なうことなくセキュリティ対策を強化できます。
  • 将来的な拡張性: システムの将来的な拡張性も考慮することが重要です。 将来的にスマートホームシステムとの連携を検討している場合などは、その点を考慮したシステム設計が必要です。 拡張性のあるシステムを選択することで、将来的なコスト増加を防ぎ、システムの寿命を延ばすことができます。
  • 管理体制と運用: システムの運用とメンテナンスを誰がどのように行うのかを明確にします。 専門業者への委託を検討するのか、自社で管理するのか、その方法によって必要な機能やシステム構成も変わってきます。

2. 設計段階:建築主のニーズを反映したシステム設計

綿密なヒアリングに基づき、建築主のニーズを最大限に反映したシステム設計を行います。

  • セキュリティ設計図の作成: 電気錠、マグネットセンサ、自動扉、タイムスケジュール機能、人感センサなどの機器配置、ネットワーク構成、データ管理方法などを詳細に設計します。 この設計図は、施工業者への指示書としても機能します。
  • 機器選定の具体化: ヒアリングで得られた情報を元に、具体的な機器を選定します。 各機器のメーカー、型番、仕様などを決定します。 コスト、機能性、デザインなどを考慮し、最適な機器を選びます。 例えば、電気錠であれば、電動サムターン式、マグネットロック式、カードリーダー式など様々なタイプがあります。 それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、建築主のニーズに最適なものを選択します。
  • システム連携の検討: 複数の機器を統合的に運用するシステムを構築する場合、各機器間の連携を綿密に設計します。 例えば、マグネットセンサが扉の不正開錠を検知した場合、警報システムを作動させたり、管理者に通知を送信したりするような連携が必要です。
  • アクセス権限管理: 利用者ごとのアクセス権限を明確に設定します。 従業員、来客、管理者など、それぞれのアクセスレベルに応じて、アクセスできるエリアや時間帯を制限する必要があります。
  • 予算の明確化: システム全体の費用を明確に算出し、建築主と予算の範囲内で最適なシステムを提案します。 費用には、機器購入費用、工事費用、保守費用などが含まれます。 予算に合わせて、機器のグレードや機能を調整する必要がある場合もあります。

3. 施工段階:確実な施工と品質管理

設計図に基づき、確実な施工を行います。

  • 信頼できる施工業者の選定: セキュリティシステムの施工経験が豊富で、技術力と信頼性が高い施工業者を選択します。 複数業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
  • 施工計画の策定: 詳細な施工計画を立て、工程表を作成します。 工程表には、各作業の開始日、終了日、担当者などを明確に記載します。
  • 資材の品質管理: 高品質な資材を使用し、適切に保管します。 使用する機器や部材の品質を事前に確認し、不良品を使用しないように注意します。
  • 配線工事の正確性: 配線工事は、セキュリティシステムの性能に大きく影響します。 ノイズ対策を徹底し、正確な配線を行います。 配線図に基づき、丁寧に作業を行い、誤配線を防ぎます。
  • 施工後の検査: 施工完了後、すべての機器が正しく機能することを確認します。 検査項目には、機能確認、動作確認、安全確認などが含まれます。 検査結果を記録し、建築主と共有します。

4. 試験調整・試運転:システム全体の動作検証

設計図通りにシステムが機能するかを確認するために、試験調整・試運転を行います。

  • 機能テスト: 各機器の機能(施錠・解錠、センサの検知、映像記録など)が正常に動作するかを確認します。
  • 統合テスト: 各機器間の連携動作(例:マグネットセンサが扉が開いていることを検知して警報を発報する)を確認します。
  • 負荷テスト: 多くのユーザーが同時にアクセスした場合でもシステムが安定して動作するかを確認します。
  • 異常時テスト: 電源遮断時やシステムエラー発生時の動作を確認し、バックアップシステムの有効性を確認します。
  • セキュリティテスト: 不正アクセスやシステムへの侵入を試みるテストを実施し、システムの脆弱性を洗い出します。 専門業者に依頼して、セキュリティテストを実施するのが一般的です。

5. 運用管理:継続的なシステム維持と改善

システム導入後も、継続的な運用管理が必要です。

  • 定期点検: 機器の故障や不具合を早期に発見するために、定期的な点検を実施します。 点検項目、点検頻度などを事前に決めておくことが重要です。
  • 記録管理: アクセスログ、警報ログなどを適切に管理し、不正侵入やトラブル発生時の原因究明に役立てます。 ログデータは、セキュリティ対策の改善にも役立ちます。
  • アクセス権限管理: 必要に応じて、アクセス権限の付与・取消しを行い、セキュリティレベルを維持します。 定期的にアクセス権限を見直すことで、セキュリティリスクを軽減できます。
  • 従業員教育: システムの使用方法や注意事項について、従業員への教育を行います。 教育によって、システムの誤操作やトラブルを減らすことができます。
  • システムアップデート: セキュリティシステムは常に最新のセキュリティレベルを維持する必要があります。 定期的にアップデートを行い、セキュリティホールを解消します。

6. トラブルシューティング:迅速かつ的確な対応

システムにトラブルが発生した場合、迅速かつ的確な対応が必要です。

  • 保守契約: 専門業者と保守契約を締結し、迅速なサポート体制を確保します。 保守契約によって、機器の故障やシステムエラー発生時の対応がスムーズになります。
  • トラブルシューティング手順書: トラブル発生時に対応するための手順書を作成し、関係者に配布します。 手順書があれば、誰でも対応できるようになり、迅速な復旧が可能になります。
  • 連絡体制: トラブル発生時の連絡体制を事前に明確にしておきます。 担当者、連絡先などを明確に記載した連絡網を作成します。

7. 法規制への対応:建築基準法、消防法など

セキュリティシステムは、建築基準法、消防法などの関連法規に適合している必要があります。 設計段階から法規制を考慮し、法令遵守を徹底します。

8. 主要機器の詳細と試験調整例

  • 電気錠: さまざまな種類があります(電動サムターン式、マグネットロック式、デッドボルト式など)。 試験調整では、各認証方法(カードキー、指紋認証、暗証番号など)による施錠・解錠の動作確認、非常解錠機能の確認、複数回連続での動作確認を行います。
  • マグネットセンサ: 扉の開閉状態を検知し、電気錠と連携します。 試験調整では、扉の開閉による反応、誤作動の有無、感度の調整を行います。

  • 自動扉: 閉店後の入店しないようセンサ機能をOFFに設定し、反応しないことと手動で開閉できないことを確認します。
  • タイムスケジュール機能: 曜日や時間帯に応じて自動的に施錠・解錠を行う機能です。 試験調整では、設定したスケジュール通りに動作するかを確認します。
  • 人感センサ: 人の動きを検知します。 試験調整では、検知範囲、感度、誤作動の有無を確認します。

まとめ

新築建築における入退室セキュリティシステムは、建築主のニーズを的確に把握し、設計、施工、試験調整、運用管理の各段階で細心の注意が必要です。 専門業者との連携を密にし、計画段階から適切なシステム設計、施工、そして効果的な管理を行うことで、安全・安心な建物を実現しましょう。 本記事が、建築主、設計者、施工業者にとって有益な情報となることを願っています。