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【管理ポイントシリーズ02】幹線設備工事の試験調整

本記事では、15年間のゼネコン監督経験を持つ筆者が、幹線設備工事における試験調整の成功に向けた管理基準と具体的なポイントを解説します。各工程におけるチェックリスト、トラブルシューティング、効率化のためのノウハウを詳細に説明することで、安全で確実な工事遂行を支援します。

 

はじめに

幹線設備工事は、社会インフラを支える重要なプロジェクトです。電力供給、通信ネットワークなど、私たちの生活に欠かせない機能を担っています。そのため、工事の安全確保と品質の維持は極めて重要です。そして、その成功を大きく左右するのが、試験調整工程です。 この工程で不備があると、工期遅延、コスト増加、さらには重大な事故につながるリスクも存在します。本記事では、この試験調整工程をスムーズに進めるための管理基準と実践的なポイントを、豊富な事例と具体的なチェックリストを交えながら解説します。ゼネコンで監督業務に携わり現場で培ってきた経験と知識に基づいて分かりやすく解説します。

第1章:幹線設備工事における試験調整の重要性

幹線設備工事は、その規模や複雑さから、高い専門性と精密な管理が求められます。試験調整工程は、工事全体の品質と安全性を確保するための最後の砦ともいえます。この工程で、設計図書どおりに設備が機能するか、安全基準を満たしているか、そして期待される性能を発揮できるかを検証します。 試験調整を適切に行うことで、以下のメリットが期待できます。

  • 安全性の確保: 潜在的な危険性を早期に発見し、事故を防ぐ。
  • 品質の向上: 設計・施工上の不具合を早期に発見し、修正することで、高品質な設備を実現する。
  • 工期短縮: 問題点を事前に発見することで、後工程での手戻りを減らし、工期を短縮する。
  • コスト削減: トラブル発生による追加費用や工期延長を防ぎ、コストを削減する。

逆に、試験調整が不十分な場合、以下のリスクが発生する可能性があります。

  • 事故発生: 設備の故障や機能不全による事故。
  • 工期遅延: 問題発見後の修正や再試験に時間を要し、工期が遅延する。
  • コスト増加: 修正費用や再試験費用などの増加。
  • 社会への影響: 電力供給停止や通信障害など、社会への影響を及ぼす可能性。

第2章:試験調整工程:詳細手順とチェックリスト

試験調整工程は、個々の機器・設備に対して、設計図書に基づいた性能試験や機能確認を行う工程です。 この工程では、以下の手順を踏むことが重要です。

  1. 準備段階:試験計画書の作成、必要な資材・工具の確認、安全対策の実施を行います。絶縁確認、作業エリアの人員配置など、安全第一の作業体制を構築します。
  2. 各機器・設備の試験調整: 変圧器、開閉器など、それぞれの機器・設備に対しての接続状況の確認(増し締め・マーキング)を行い、絶縁抵抗試験を実施する。各試験毎に、試験結果を記録し、異常がないことを確認します。
  3. チェックリストと記録方法: 試験項目、手順、結果を記録するチェックリストを作成し、試験ごとに正確に記録します。この記録は、後工程の試運転や、将来的なメンテナンスにも役立ちます。
  4. よくあるトラブルと対策: 接地不良、絶縁不良、過熱などは、よくあるトラブルです。 これらのトラブルの原因を特定し、適切な対策を行う必要があります。

 EX)試験項目例

  ・回路番号

  ・幹線サイズ

  ・ケーブル種別

  ・幹線番号

  ・増し締めマーキング

  ・幹線札の記載内容の整合

  ・絶縁抵抗

まとめ

本記事では、幹線設備工事における試験調整工程の重要性、手順、管理基準、トラブルシューティングについて解説しました。 これらの知識と技術を習得し、適切な管理を行うことで、安全で高品質な幹線設備工事を成功させることができます。

今後の展望としては、AIやIoT技術を活用したスマートな試験調整・試運転システムの導入が期待されます。これにより、より効率的で、精度の高い試験調整・試運転が可能になります。また、人材育成にも力を入れることで、熟練技術者の減少を補い、持続可能な社会インフラの維持に貢献していく必要があります。