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【管理ポイントシリーズ01】受変電設備工事における試験調整・試運転の管理基準とポイント

はじめに

電力供給システムの根幹を担う受変電設備工事。

その成功は、安全・安定供給、工期遵守、コスト管理に直結します。

特に試験調整・試運転段階は、設計通りの性能と安全性を確認する重要な工程であり、適切な管理が不可欠です。

本記事では、ゼネコンで受変電設備工事の監督業務に携わってきた経験に基づき、試験調整・試運転の管理基準とポイントを分かりやすく実務に役立つ情報を提供します。

1. 計画段階:綿密な準備が成功の鍵

試験調整・試運転は、計画段階から綿密な準備が必要です。計画の不備は、後々のトラブルや工期遅延に繋がる可能性があるため、十分な時間をかけて計画を策定しましょう。

  • 試験調整・試運転計画の策定: 工事全体の計画に基づき、試験調整・試運転の工程、手順、担当者、必要な機器・資材、スケジュールなどを明確に定めた計画書を作成します。計画書には、各試験項目、実施方法、合格基準、安全対策などを詳細に記述する必要があります。
  • 関係者との打ち合わせと役割分担: 関係各所(設計担当者、施工担当者、検査機関など)と綿密な打ち合わせを行い、役割分担を明確にしましょう。特に、責任者と連絡体制を明確にすることは、スムーズな作業遂行に不可欠です。
  • 必要な機器・資材の準備: 試験に必要な機器(測定器、試験装置など)や資材(絶縁油、保護具など)を事前に準備し、点検・校正を行いましょう。不足や故障がないよう、十分な数量を確保する必要があります。
  • 安全対策の計画: 高圧電流を取り扱うため、安全対策は特に重要です。安全教育、安全手順書の作成・配布、安全資材の用意、作業環境の安全確保など、万全の対策を計画しましょう。
  • 工程表の作成とスケジュール管理: 各試験項目の実施時期、所要時間などを明確にした工程表を作成し、スケジュール管理を徹底します。遅延が発生した場合には、速やかに原因究明を行い、対策を講じる必要があります。
  • チェックリストの作成と活用: 試験項目、手順、確認事項などをまとめたチェックリストを作成し、作業漏れやミスを防ぎます。チェックリストは、作業前、作業中、作業後に活用することで、作業の正確性を向上させることができます。

2. 準備段階:万全の準備でリスクを軽減

計画に基づき、試験調整・試運転に必要な準備を万端に行いましょう。準備不足は、重大な事故やトラブルに繋がりかねません。

  • 試験機器の点検と校正: 使用する試験機器の点検・校正を行い、精度を確保します。校正証明書を保管し、必要に応じて提出できるようにしましょう。
  • 作業手順書の作成と配布: 試験項目ごとの作業手順書を作成し、関係者全員に配布します。手順書には、作業方法、注意点、安全対策などを詳細に記述する必要があります。
  • 作業員の教育と訓練: 作業員に対して、安全教育、作業手順、緊急時の対応などを十分に教育・訓練します。特に、高圧電流を取り扱う作業には、熟練した技術者が必要となります。
  • 安全帯などの安全資材の確認: 安全帯、絶縁手袋、保護メガネなど、安全資材を十分に用意し、適切に使用することを徹底します。
  • 試験場所の確保と安全確保措置: 試験場所を確保し、立入禁止区域を設定するなど、安全確保措置を講じます。関係者以外が立ち入らないよう、適切な管理が必要です。

3. 実施段階:正確な作業と記録が重要

試験調整・試運転は、計画と準備に基づき、正確な作業と記録を徹底します。

  • 試験手順に沿った正確な作業: 作業手順書に沿って、正確に作業を行います。手順書から逸脱する場合は、責任者の承認を得る必要があります。
  • 各段階での記録の正確性: 試験項目、測定値、日時、担当者などを正確に記録します。記録は、後々のトラブルシューティングや品質管理に役立ちます。
  • 測定データの記録と分析: 測定器を用いて、各種データを正確に測定し、記録します。測定データは、分析を行い、設計値との比較を行います。
  • 問題発生時の対応手順: 試験中に問題が発生した場合、速やかに対応するための手順書を用意しておきます。緊急時の連絡体制も明確にしておく必要があります。
  • 写真・動画による記録: 作業状況、測定器の表示、異常発生時の状況などを写真や動画で記録することで、後々の検証に役立ちます。

4. 確認段階:問題点の特定と改善

試験結果に基づき、問題点の特定と改善を行います。

  • 試験結果のレビュー: 試験結果を詳細にレビューし、設計値との差異、異常値などを確認します。
  • 問題点の特定と原因究明: 問題点が見つかった場合は、その原因を究明します。原因究明には、測定データ、記録、写真・動画などを活用します。
  • 改善策の検討と実施: 問題点の原因が特定された場合は、改善策を検討し、実施します。改善策の効果を検証し、記録を残す必要があります。
  • 記録の確認と修正: 記録に誤りや不足がないかを確認し、必要に応じて修正します。
  • 関係者への報告: 試験結果、問題点、改善策などを関係者へ報告します。

5. 報告段階:関係者への情報共有

試験結果をまとめ、関係者へ報告します。

  • 試験結果報告書の作成: 試験結果、問題点、改善策などをまとめた報告書を作成します。報告書は、関係各所へ提出します。
  • 関係者への報告と説明: 関係者に対して、試験結果を報告し、説明を行います。必要に応じて、質疑応答を行います。
  • 問題点と改善策の共有: 問題点と改善策を関係者間で共有し、今後の工事への反映を図ります。
  • 記録の保管: 試験結果、記録、報告書などを適切に保管します。

6. 関連法規と規制への準拠

電気事業法、電気設備技術基準、その他の関連法規を遵守することが不可欠です。法規に違反した工事は、安全面だけでなく、法的責任も問われます。

特高受変電設備の場合、工事計画届の提出と安全管理審査の受験が必要となります。

安全管理審査について (METI/経済産業省)

まとめ

受変電設備工事の試験調整・試運転は、安全で安定した電力供給に直結する重要な工程です。本記事で紹介した管理基準とポイントを参考に、綿密な計画、万全の準備、正確な作業、そして法規制への準拠を徹底することで、安全で効率的な工事を実現し、社会貢献に繋げましょう。

本記事は、概要と重要なポイントを解説したものであり、具体的な手順や技術的な詳細は、関連書籍や専門家への相談を推奨します。